夫婦・卒業旅行(9)ヴェネツィア

 水の都ヴェネツィア塩野七生さんが海の都と呼んだ、海の上に作られ、海の向うへと開かれていた街です。
 海の彼方、シルクロードを進み、東方まで足を踏み入れたマルコ・ポーロもまたヴェネツィア人なのでした。

 船を使って街へと向かう。街を車で走ることはできず、街へと向かう道はいりくんでおり、船で街へ向かうのが効率の良い手段であり、また実質的に唯一の手段だとのこと。
 街に至り、やはり高いところに登りたがる私は、早速に高いところに登ります。サン・マルコ広場にそびえ立つ鐘楼は98メートルあるそうです。レンガ造りのシンプルなもの。エレベーターがあり、容易に展望台までたどりつきます。
 高みに立って、街を眺めれば、ヴェネツィアが海の上の街だということが良く分かる。広がるのは海。その海に大小様々な島が浮かび、そのわずかな土地にひしめくように建物が建てられている。
 改めて海に開かれた街との思いを強くする。コーエー大航海時代というゲームでよくこの街に来たっけなあ、陶磁器が特産品だったっけ。などと変な感慨に浸ります。
 
 ヴェネツィアの特産品として名高いのがヴェネツィアングラス。街のいたるところでグラスが売られています。その工房見学がありました。マエストロが、真っ赤に熱せられたガラスをひょいひょいと摘んでいくと、たちまちのうちにお馬さんができあがる。圧巻。
 その技術に魅入られ、とりつかれたかのごとくヴェネツィアングラスを買い求めるヒトがいる。例によって例のごとくうちのかみさんでございます。
 
 街を歩きます。街には運河が網の目のように走っていて、だから、いたるところに橋が架かっています。橋を、ゴンドラが観光客を乗せてくぐります。
 また積荷を載せたモーターボートも走り行く。建物には運河に対して開かれた扉があり、今なお実生活の一部として運河が機能していることが良く分かります。
 
 運河を楽しむにはゴンドラです。六人がけのゴンドラに乗り、街を遊覧する。ゴンドラの上は静かです。櫂のたてるわずかな水音が耳に心地いい。家々が運河に対して開かれていることがよく分かります。途中、マルコ・ポーロの家なるものを紹介されました。
 食事はイカ墨のスパゲティでした。ぶ。みんな口の周り真っ黒にさせて、スパゲティを頬ばっている。うぷぷぷ。と笑っていた自分が写真で見れば、一番口の周りを真っ黒にさせておりました。
 
 また船に乗り、ヴェネツィアに別れを告げる。街が海の向うに消えていく。海に見た一つの幻想のような体験でした。