2005年 3月19日〈世界の中心で好き好き大好き超愛してると叫ぶ〉

 映画の「世界の中心で愛を叫ぶ」を借りてきて観ました。
 実に古典的なサナトリウム文学ってやつ。四国の鄙びた風景をバックに展開される高校生の恋愛。少女を襲う突然の不治の病。いかにもお涙頂戴のいたってありきたりな話です。
 だが。
 私はこういうのが好きだ。うおんうおん。ずるいなあ。おいおい。いやあ、鼻水たれまくりでした。長澤まさみ森山未来がイイっ(あ、ショタではないですから!)。柴咲コウは難しい役どころでしたが。
 売れる映画というのはこういうものなんでしょうね。何か斬新なもの、超絶技巧、そのものにしかない特異なもの、といったものは一切必要無く、典型的なもののその典型性のゆえの出来のよさ・まとまりのよさが求められているんだなあ、と深く感じた次第。
 美人の条件とはすべての部分が平均であることで、徹底的に平均であることはかえって稀である、ということを『バカの壁』の著者である養老孟司先生がおっしゃってましたっけ。

〈超絶技巧〉

 私は舞城王太郎さんの諸作品が好きです。
 で。舞城さんに「好き好き大好き超愛してる」っていう小説がありまして、これって芥川賞候補になったものです。もっともタイトルが嫌われて評価の俎上にすら載せてもらえなかったのだけれど。
 この作品も愛する人の死を扱っていて、『世界の中心で愛を叫ぶ』のパロディという言い方をされたりもするんですが、「好き好き大好き超愛してる」には、斬新なもの、超絶技巧、この作品にしかない特異なものがあって、私はとてもこの作品を評価するし、でもそれゆえにこそ売れないんだろーなあ、と思われもします。手法の難しさのわりには、それでも、そこそこ売れてるのかもしれませんが。
 いずれにせよ売れなければいけないという制約条件による、めいいっぱいの剛速球を投げることができない辛さって、多かれ少なかれ作家の皆さんは抱かれているのだろうと推測します。

〈ファンタジックな映画〉

 ラストサムライを観ました。
 ニュージーランドの美しい自然に感動(笑)。
 うわっ、これ『射玉行』じゃん、って頭を抱えてしまいました。
 正確には次に書かれるべき「王の手」をはじめとする『射玉行シリーズ』と同じと感じたわけですが。
『射玉行シリーズ』っていうのは、西欧文明が圧倒的な力をもって世界の隅々まで広がっていくという歴史を、文化人類学社会学的視点を持ちつつ、生物学に依拠したSFで修飾して表現するファンタジー小説として構想されているのですが、ラストサムライはまさにそういう作品、西欧文明の与えた衝撃を背景とするファンタジックな映画でした。アメリカの先住民と日本人とを同質のものと捉える視点も私好みです。

 配役が良かったです。NHK大河ドラマの『独眼竜政宗』と『太平記』が好きな私は、もう渡辺謙真田広之が出るだけで狂喜乱舞(あ、ホモではないですから!)。
 空虚な中心としての中村七之助も含めてみんな良い味出してます。「キャラ」が立ってるというのは、やはり映画にとってとても大事なことで、面白く観ることが出来ました。

 そういえばDVDを観るってのも19インチCRTの利用の一環として位置づけられますね。ウチのプログレッシブじゃないテレビより、ずっと綺麗に映ります。こいつの有効利用のためにもまた何か借りてこようっと。