夫婦・卒業旅行(2)添乗員付きツアー

 旅行代理店でパンフレットをもらってきて、あれでもないこれでもない、と見ているうちに、気づいたことがあります。団体で行動しなければならない添乗員付きツアー。そんなもの端から興味がなかったのですが、イタリアとフランスとを回るコースが充実しているため、一応それにも目を通してみました。すると、食事もついていて、巡る観光地も多く、それなのに安い。添乗員のいない、ホテルと朝食と都市間移動だけのプランとほとんど同じ金額設定になっているではないですか。
 と、ここで、去年十月のことが思い起こされました。十月、卒業試験を終えた私はカミサンを伴って、有馬温泉へと出かけたのでした。そのとき、駅から歩くこと十分で、駅へと到着してしまった、ということがありました。なんのことはない、道に迷っちゃったわけです。「ごめん、道に迷っちゃったみたい」と報告する私に、飛んできたのは馬場の十六文キックばりの蹴りでした。
「有馬で蹴りだったのだから、ローマで道に迷おうもんなら……」
 いかんいかん、夫婦・卒業旅行が夫婦旅行&大学卒業旅行ならぬ「夫婦卒業」旅行になってしまう。
 これは、道に迷ったときに蹴られる役を、謹んで添乗員にお譲りしよう。そう私は思いました。こうして──団体で行動することに少なからぬ心配はありましたが──ツアー参加することを決めたのでした。