夫婦・卒業旅行(5)ローマ2

 憧れのローマ。
 コロッセオフォロ・ロマーノを巡ります。
 街のど真ん中に、どでかい遺跡が自然な感じであるわけです。紀元前の昔から連綿と続く歴史をありありと感じます。
 フォロ・ロマーノは、塩野七生さんの『ローマ人の物語』でも度々登場する、古代ローマの政治・経済の中心となった広場で、積み重ねられた歴史の重みに、くらくらと眩暈に似た感動を覚えました。
 続いてヴァチカンに入り、ローマ法王の姿をバスからちらりと拝見。広場の中央にいる法王を、広場の両脇にある巨大ディスプレイが大写しにし、拡声器が法王の声を広場に流す、というそのさまは、昔のSFにでも登場しそうな、実現された近未来としての現代の宗教者のありようです。
 ティベレ河は名をよく聞くものの茶色い水を湛えるだけの河ですが、ガイドさんの「『ローマの休日』で船上パーティーがなされたのはこの河で……」との紹介で俄然興味をそそられます。
 さてさて、続いてトレビの泉。思わず散髪屋さんを探します。ガイドさんの解説、「一枚コインを投げ入れるともう一度ローマに戻ってこれる、二枚コインを投げ入れると今付き合っているひととうまく行く、そして三枚コインを投げ入れると今つきあっているひととうまく別れられる」というのに大爆笑。……慰謝料は五億円、というのが我が家の固い掟でございます。
 ともあれ、コイン投げで有名な観光名所。泉は豊富な水量を誇り、水は澄み、ネプチューンは、三人組ではなく、海神として勇姿を誇っています。さっそくにトレビの泉にコインを投げ入れる。え? 何枚コイン投げ入れたか? ……ふふふ。そんなの決ってるじゃないですか。
 ただこの観光名所、スリが多いとのこと。ヒトのカメラを使って王女の写真を撮ろうとする新聞記者……というわけではないようです。かみさん、「あのコ、カバンじっと見てる、目つきが怖い」と言います。このあたり、鬼太郎の妖怪アンテナのごとく、感度の高い彼女の万引き・スリアンテナが遺憾なく真価を発揮するところ。私は大事なものを彼女に預け、安心して観光を楽しみます。
 そして、ジェラートです。ジェラート! アン王女も楽しんだ、イタリアのアイスクリーム。乳脂肪たっぷりでこってりしています。
 
 スペイン階段では、ああ、オードリー・ヘップバーンジェラートを食べていたのはこの地であったのだな、との感慨を抱き、ヴィットリオ・エマニュエル2世記念堂前では、ここを彼女がバイクで過って行ったのだ、と思い描く。夕方、訪れた、真実の口では、すでに扉は鎖されていて、口に手を差し入れることができないのを、ただひたすら残念に思ったのでした。
 と、まあ、こんな具合に『ローマの休日』巡りを楽しみました。