夫婦・卒業旅行(6)シエナ

 ローマからはバスに揺られてシエナへと向かいます。イタリアを北上する旅です。道中、小高い丘には趣きある教会を中心とした村が見られ、風情を伝えます。その一つについて。「日本でなら、観光名所になるでしょうが」と添乗員さんは言います。イタリアではどこにでもある珍しくないもので、無名の村だそう。かつてこうした教会や居住地は外敵のことを考えて丘の上に建てられたのだけれど、現在では交通の便が悪いため、打ち捨てられて廃墟となりつつある、とのことでもありました。
 畑のそこかしこに立ち並ぶ木々のところどころに鳥の巣があるのも、また目を惹きつけられます。
 
 そして訪れた街、シエナ
 イタリア中部トスカーナ地方にある人口七万人の小都市です。街は丘にあり、勾配の急な石畳の道が街を走ります。石造りの家が立ち並び、路地も多く、中世のたたずまいそのままです。路地に入り細い道を進めば、異邦の都市にやってきたとの感覚に酔いしれることができます。
 それでもそうした中世的な建物の中には、現代の商店として機能しているものも多く含まれる。お店に並ぶものが、最新のファッションであったり電気製品であったりするわけで、そのあたりイタリアという国の古代から中世そして現代へ連綿と続いているさまを感じます。
 カンポ広場に立つ。この広場は、すり鉢状に傾斜した扇形をしており、舞台のよう。ここで開かれる荒馬競馬パリオの熱気と喧騒とを夢想することができます。
 料理は牛肉のワイン煮込み。脂肪の少ないウシが具合よくワインで煮られていて、普段日本で食べる機会のない味との感動を得ました。
 
 小都市だからこそ維持することのできる雰囲気のよさを存分に堪能できたのでした。