愛蘭土倫敦紀行 ダブリン・ロンドン4泊7日の旅(3)

ダブリンの街並み

 澄んだ空の下に、広がる青い海。ダブリン湾は波穏やかで、北端をなすホウス岬までが見渡せる。遠浅の海には、ヨットがいくつも浮かび、日の光を浴びている。
 初めて臨むダブリンの印象は、明るさに満ちて鮮烈でした。
 快晴の僥倖に恵まれて、滅多に見られない姿をしているのだ、と、空港に出迎えてくれて、そこから家までの道のりを車で送ってくれている義兄が教えてくれます。
 灰色の空の下の澱んだ海こそが、ダブリンらしいのだ、と。そしてそうした天気は数時間後には、訪れるだろう、とのこと。
 なるほど、この遠浅の海が雨に煙れば、湾の奥まったところに2本立ち並ぶ威圧的な火力発電所の煙突と相まって、労働者の陰鬱な街、との雰囲気をこれ以上なく高めるだろう、と思いました。
 とはいえ、車窓には、初秋の日差しに彩られた街が広がります。街には緑の木立ちが生い茂り、小ぶりの家が軒をそろえ、かわいらしい煙突を並べています。木々はややもすると野放図に育ち、都会の中にありながら、主のごとく長い年月を過ごしてきたのだと見て取れます。住宅は比較的間取りの似たものが間を開けずに立ち並んでいます。
 高層建築とは無縁の、時代を重ねた街並みに、心は安らぎます。
 北に位置する空港から南に進み、ダブリン市街を抜けて、海沿いにさらに南に進み、郊外へ。塀が取り囲み、門がしつらえてある一区画へと入っていきました。
 姉の家は、引っ越しして間もない、一戸建ての煉瓦造りの瀟洒なものでした。日本ではちょっと手が出せないような、高額な賃貸料ですが、全て会社負担とのこと。
That's quite an investment to keep one expat family happy if Imay say so.
という、「NHKラジオやさしいビジネス英語」の一節をふと思い出してしまいました。
 穏やかな光りのなかで、実に快適な印象のある建物です。この家にも煙突がある。家の中には、煙突に対応して、暖炉がある。姉たちがこの暖炉を使いこなして、アイルランドの長い冬をやり過ごすのかどうかは分かりません。
 しばらく休憩。そして、DARTと呼ばれる、市の中心と郊外とを結ぶ電車に乗り込み、市内観光へと出向きます。18時間を越える飛行機の旅の着時刻が12時で、家には14時頃につき、そして15時45分頃には、再出発、というハードな展開です。翌日の予定に、最も行きたいと思っていたトリニティカレッジを組み込むのが難しそう、ということがあり、どうしてもこのタイミングで市内に行かねばならなかったのです。それでも17時に閉館となるトリニティカレッジの図書館に間に合うかどうか、ギリギリというところ。姉と姪っ子たちとともに、いそいそと出かけます。