愛蘭土倫敦紀行 ダブリン・ロンドン4泊7日の旅(4)

トリニティカレッジ

 DARTの駅からも海が臨まれます。潮が引き、訪れるときに見た青い海の印象がだいぶ薄れていることに気づきます。そのとき広がっているのは干潟でした。干潟を散策する人たちの姿を、遠くに臨むことができます。DART海浜を進み、この風景を堪能できます。
 
 Pearse駅で降り、市内を駆け足で進んで、トリニティカレッジへ。
 トリニティカレッジは、1592年に設立された歴史深い大学です。今なお国際的にも名門で、特に英文学の分野においてすぐれています。卒業生にはガリバー旅行記のスウィフト、オスカー・ワイルド、サミュエル・ベケットなどそうそうたる名前が挙がります。
 ここの目玉は──あるいはダブリン観光の・アイルランド観光の目玉は、と言ってもいいかもしれませんが──ケルズの書と図書館です。
 ケルズの書は、8世紀に制作されたと言われる聖書の写本で、その装飾は世界で最も美しい、と讃えられています。1日1ページが公開されていて、かってにめくるわけにはいきません。
 訪れたとき、既に閉館まで15分と迫っていました。入り口では半額でかまわない、とのこと。かみさんと二人分で9ユーロ、となります。娘はついてこない、中庭で待っている、と言います。
 突き進んで、ケルズの書を見ます。これが伝説の書だ、という感動とともに、正直、今日開かれているページ、それほど装飾がされていない箇所では、という、膨らみきった期待がみたされぬ感じを覚えもしました。
 そのまま奥へと進むと図書館のロングルームに抜けるようになっています。
 この図書館は、法定納本図書館でアイルランド・イギリスで刊行される全ての書籍が集められる、アイルランド最大の図書館であり、500万を越える書籍を収蔵しています。スターウォーズジェダイアーカイブのモデルとなったとされるロングルームは長さ65メートルあり、吹き抜けの高い天井におよぶまで建てられた漆塗りの頑丈な本棚に、古書がずらりと並び、その古色蒼然として荘厳なありように、人類の集積してきた知というものへの畏敬の気持を抱かされます。
 無数に並ぶ知識人の胸像の列の中にスウィフトのものがあり、その前で写真を撮る。スウィフトは彼の論考をそのままのかたちで、射玉行に組み込んだこともありますが、そのエキセントリックな思考は、全面的な肯定をしがたいけれど、それでも親しみを覚えてしまう、そういう自分にとって思い入れのある人物です。
 短い時間を過ごし、追い立てられるように進んでいくと、土産物販売のショップにでる。なかなか面白いものが陳列されていて、数十人の観光客がいるのですが、「もう終わり、こっちから出てください」という声がかけられていて、みんな外に出されてしまいます。商売っけがなさすぎませんか? と思います。
 中庭でいとこたちとトランプをしていた娘と合流します。
 合流したあと、コインをはじめお土産物など、いろいろなものの意匠に用いられている「最古のハープ」を見落としたことに気づきました。仕方がありません。