愛蘭土倫敦紀行 ダブリン・ロンドン4泊7日の旅(7)

バスの旅

 翌日、アイルランド2日目の空は、灰色でした。天気は崩れていく予想となっています。
 体内時計はまだ十分な修正がなされておらず、ダブリンの5時には目が覚めてしまいます。日本の13時くらいです。
 姉から薦めてもらったのは、バスツアーでした。ダブリン郊外南方にグレンダロッホというところがあり、古い教会跡があるのだが、湖に面していて、その湖周囲の散策がとても雰囲気がよいのだとのこと。
 そして、そこは電車では行きにくく、ツアーバスが出ているから、それに参加するのがよいだろう、とのこと。姉の家のパソコンを使ってネットで見てみると、七時間程度の行程で、朝10時の出発。大人26ユーロ(約3100円)、子供20ユーロ(約2400円)。
 遺跡に対する憧れは強いです。
 ネットで予約ができて、クレジットで支払いができるようなので、そのようにしました。ユーロに関しては、現金は200ユーロしか持ってきていないので、なるべく支払えるものはクレジットで支払ってしまおう、と思っていたからでした(本当は前回の旅行で余っていたトラベラーズチェックを使いたかったのですが、この旅行では全くトラベラーズチェックが使えませんでした。年々取り扱いが悪くなっていっているようです)。
 さあ、いざ出発というときになってトラブル発生。娘がいとこたちとトランプして遊ぶから家にいる、と言ってききません。もともとダブリン訪問の主眼は、姉家族を訪れることにあったわけですから、それはそれでいいかもと内心思いました。しかし既にクレジットで支払いを済ませてしまっています。
 泣きじゃくる娘を、なだめすかせながら、出発にこぎつけました。
 昨日姉たちといっしょに乗ったDARTに、今度は家族三人だけで乗ります。娘をなだめるのに必死で気づきませんでしたが、異邦の地にアジア人家族三人が放り出されたわけです。一駅一駅の到着に、昨日とはまったく異なった神経をとがらせながら、進みます。そうすると車内アナウンスが、英語とゲール語の二本立てになっているのが、よく分かり、興味深かったりします。
 昨日のPearse駅より一つ向こう、Tara Street駅で降ります。地図を片手に、橋を渡り、市街地をつっきって旅行センターを目指します。娘の説得に手間取って、だいぶぎりぎりの時間になっています。名所も目に入らず一心に進みます。
 旅行センターは清潔で簡素な建物でした。緑を基調とした明るいセンター内に、若い女性が二人ばかりいて、そのスタッフにメールのコピーを見せます。スタッフ間のやりとりに、なんとなくシステムをあまり把握していない感じが伝わってきます。
 ともあれチケットがやがてプリントされて、これでいいよ、と手渡されます。いってらっしゃい、ってかんじで、話が終わってしまう。おいおい。どこいったらいいの? と聞く私に、スタッフは予期せぬような早口で言います。右曲がって2ブロック目のところ、ここから300mくらい、×××っていう建物の丁度目の前くらい。
 要求されるレベルの高さにびっくりします。観光客には無理だってそんな案内。それじゃ分からん、というと、あ、地図に書くね、ということになって、地図に書いてくれます。何時までに行ったらいい? と聞くとにこやかに9時55分と言います。これもまたびっくり。今9時57分だってば。
 するとこの若い女性スタッフはにこやかに、あ、じゃ今。と言います。
 この独特の、陽気なヌケッぷりは一体何だろう? と思います。
 ともあれ、急いで進む。赤や黄色の観光バスが並んでいて、これかなあれかな、というふうに詮索する。やがて、GPO(郵便局)が名所であることが分かり、その郵便局の向かいに停まっているバスがそのバスであることが分かります。